IBコース Jon Homewood 先生, Yvette Flower 先生インタビュー

茗溪学園が2016年に認定を受け、翌年から導入している国際バカロレアディプロマ・プログラム(通称IBDP、以下IBコース)について、2018年4月に赴任され、実際に生徒を指導しているMr. Jon Homewood(ジョン・ホームウッド先生)にお話をお聞きしました。長年、茗溪学園で教えていらっしゃるMs. Yvette Flower(イベット・フラワー先生)も同席されました。このインタビューは2018年7月14日に行いました。

 

               右:Mr. Jon Homewood(ジョン・ホームウッド先生)

                                                            左:Ms.Yvette Flower(イベット・フラワー先生)

 

1. Homewood先生、ご自身の自己紹介をお願いいたします。

日本は私が住むことになった8番目の国です。私はイギリス人ですが、これまで、ナイジェリア、南アフリカ、ブラジル、メキシコ、そしてイギリスで生活し、教育を受けてきました。技術関連の科目の教職課程を取得したのはイギリスです。専門は生物と環境科学で、イギリスで2年間教鞭を執りました。
その後、スペインやシンガポールを経て、東京で職を得て2年半過ごしました。茗溪学園との出会いは、ちょうどその職場を離れようと思っていたときでした。茗溪学園の元国際教育部長・Stephen Bird先生にお会いし、「ちょうどIBを始めたところなので、見に来てみませんか?」と誘っていただいたのです。実際に伺うと、IBに長年携わっている私のバックグラウンドがお役に立ちそうなことがわかりましたので、こちらに赴任してIBコースのスタートのお手伝いをすることになりました。

              Mr. Jon Homewood(ジョン・ホームウッド)先生

 

2. 茗溪学園のIBコースでは生物学を教えていらっしゃるのですか?

いいえ、私は環境システムと社会(Environmental Systems and Societies) とTOK(注:IBの1科目。Theory of Knowledge。持っている知識を「知る」または「知っている」とはどういうことなのか、などを学習し「考え方」を問うもの)を教えています。茗溪学園のIBコースでは生物学を日本語ですでに教えていますので、英語と日本語の両方で教えられるようになれば、私も生物学を教えられると思います。

               Ms. Yvette Flower(イベット・フラワー)先生

 

3. 茗溪学園には現在IBの先生は何人いらっしゃいますか? 茗溪にすでにいらっしゃる先生や、あるいはIBに認定された方々ということになりますか?

ほとんどすべての教員はIBの研修を受けており、実際には30人以上になります。もともといらした先生方がさらにIB科目を勉強して取得し、実際に教えていらっしゃいます。

4. 茗溪学園で教えている中で、他の学校と比較して何か異なる部分はありましたか?

とても違っていると感じています。インターナショナルスクール、これはもともと存在していたIBを教育のベースとした学校のことを意味しますが、そちらは結果的に世界のさまざまな大学に進学できるような教育を行っていますし、実際に進学しています。
一方、茗溪学園はとても挑戦的な取り組みをしていると思います。日本の大学に進学することを想定した日本の教育システムをベースとしながらも、海外の大学に進学することにも挑戦しています。ただ、それはすべての生徒ではありません。このような形でのIB導入は、インターナショナルスクールのそれとは全く異なり、とても挑戦的な取り組みです。伝統的に日本で行われている方法から、学校教育に対する考え方を変えていく必要があるからです。

 

5. それはIBの教科を教えている先生も含めてですか?

一般的には元からいらっしゃる先生方がそうですが、IB科目を教えるにあたり、先生方は大方楽しんでいらっしゃるようにお見受けしました。思うに、今までは教えたことがない科目についても教える機会を得られるからではないかと感じます。今までは茗溪学園の既存教科だけが教える対象科目でした。IBの試験はより広範なもので、そのための準備も必要です。先生方はその広範なものに対応するため活気づいているように見受けられます。
それ以外に、日本の教育システム特有の難しさがあります。IBではおおよそ2年コースが通常で、その最後に修了試験があり、その試験が11月に行われることになっています。しかし、日本では学校が4月からスタートするため、正味2年の期間を少し短くする必要が出てきます。通常インターナショナルスクールでは20カ月の教習期間がありますが、日本では18カ月で行う必要があるのです。加えて、日本の教育体系では追加教科が発生します。この状況は、他国でのIBに比べると時間がタイトにならざるを得ない状況にあります。
文部科学省では、日本の教科を勉強することでIBの単位取得とすることも検討しているようです。教科のうちいずれかを兼用することが許容されてくるようになるでしょう。少しずつ改善されていく兆候があります。一例が体育です。さらに情報や日本史B、地理も検討されているようです。また、IBの歴史を取得することで日本史を学習したこととみなすことも検討されていますが、現時点ではこれら両方を取得しなければならない状況にあります。徐々に状況は変化していくと思うのですが、すぐに実現できるということではなく、時間を要します。

6. 生徒は通常より短い期間で、さらに追加してさまざまなことをやらなければならないことになるわけですね。

はい、もともとIBの教科は大変です。うまくやっている生徒は、自分で自分のモチベーションを上げています。自らがやらなければならないことを自分で作りだし、それを自分でこなしていかなければならないのです。私自身もかなりの時間を、彼らが自分のやるべきことを自分で選択できる力をつけることに割いています。また授業時間中は、彼らが自分たちでやらないといけないことを時間内にできるように注意を払っています。
時間管理がとても大事です。もしうまくできないと、その教科習得を達成できなくなります。何をやるべきか、やる必要がないか、今やるべきか、家でやるべきかなどを自分で見極めることが必要になり、その点はかなり厳しく指導しています。もし期日までにやっていないと、必ず提出遅れとしてカウントしています。これは重要で、厳しくやることで期日までに終えられるようになり、逆に感謝されるようになります。もし厳しくやっていないとどうなっていたか彼ら自身、その状況が怖くなるようです。

それほどまでに厳しくやる理由は、IBはやることが多く、課題はオンライン上で提出するため、期日に間に合わないと、それでもう終わりになってしまうからです。そのため、生徒はそのシステムに慣れる必要があります。「やるのを忘れた」「ほかの事で忙しかった」といった言い訳は通用しません。もしパソコンなどの機器の不調が原因だったとしても認められません。パソコンの不具合は誰にでも起こりえることですので、そのようなことも想定して対処をすることが必要になります。通常課題の期限は1、2週間先に設けていますので、そういったことも含めた時間管理が求められます。

 

このように、IBは通常の日本の教育システムとは違った特色をもつ、海外の大学進学を想定した教育システムですが、日本の大学に進学したとしても、「勉強熱心で発想が豊かないい学生が来た。もっとこんな学生に来てもらいたい」と認識されると思います。

今日はどうもありがとうございました。