毎年恒例、吹奏楽部の定期演奏会がつくば市のノバホールで7月27日に行われました。この定期演奏会には毎回野球部の方々が演奏を聴きに訪れます。今回は野球部の父母の方に吹奏楽部とのつながりについてご寄稿いただきました。
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40K(5年)福田 佳代子
■7月23日
高校軟式野球部(以下、野球部)は、J:COMスタジアム土浦で行われた夏季県大会決勝戦を13対3で制して優勝を勝ち取りました。それに伴い、栃木県宇都宮市で開催され、全国大会出場をかけて争われる北関東大会及び地元開催の茨城ゆめ国体への出場が決定しました。
この北関東大会には、関係者以外にはあまり知られていない、吹奏楽部と野球部との繋がりがあります。
■7月27日
午前の練習を終えた汗まみれ、さらには砂まみれの野球部員たちは、疲れているのにどこかソワソワ・ニコニコしています。普段は汗も拭かず、「そのまま電車に乗ったら周りの方にご迷惑が…。」と心配するほどの部員までもが、制汗シートで身体を拭き、制服に着替えて、みんなで楽しそうに昼食へと向かって行きました。
なぜって?
つくば駅近くのノバホールで午後5時から開演の「茗溪学園吹奏楽部 第35回定期演奏会」に伺うためです。
この演奏会は、パンフレットやポスターの作成・司会・指揮に至るまで、すべて吹奏楽部員の手作りで企画されているそうです。また、5年生(高校2年生)にとっては、この演奏会を最後に引退する節目でもあり、下級生にとっては、部をまとめてくれていた5年生と一緒に演奏できる最後の活動となります。それぞれに思い入れのある大切な演奏会なのです。
イベントの多い茗溪学園の生活の中で、企画をしながらたくさんの曲を練習し、完成度を高めていくことはとても大変だったと思います。その音色は日常を忘れさせてくれるほど、のびやかで心地よく、スポットライトが当たるステージへと吸い込まれていくようでした。(暑い中練習をしてから来た野球部員の一部は、あまりの心地良さに、どこか違うところへ吸い込まれていったようですが。)
この演奏会の1つの特長にミュージカルがあります。今年は、「アナと雪の女王」。曲の演奏以外に、ミュージカルとは! 吹奏楽部のマルチな才能に驚きます。衣装も手作り、ステージだけではなく観客席まで舞台として繰り広げられ、圧巻の歌声に、「この子たちの進路は劇団四季かしら?」と思うほどでした。
定期演奏会終了後、野球部員はロビーで吹奏楽部の部長さんが出てくるのを今か今かと待ちました。赤黒く日焼けして、夏服の紺のポロシャツを着ている部員が多かったためか、大勢でニヤニヤしながら整列して待ち構えるその姿を、通りがかった先生から「変!変!」と笑われてしまいました。確かに吹奏楽部の雰囲気とは対照的で、面白い光景だったと思います。
実は、野球部員が代々定期演奏会に伺うのは、北関東大会での応援演奏のお礼の意味合いがあります。演奏会が終了してホッとしている部長さんをお呼びして、気持ちばかりのお花とお菓子を贈呈し、一同「北関東大会の応援演奏をよろしくお願いします!」とご挨拶させていただきました。
■7月30日
定期演奏会が終わってつかの間、野球部父母会から母2名が練習中の吹奏楽部に伺いました。真剣なその練習風景、間近で聴く演奏の素晴らしさに、思わず感涙にむせんだそうです。吹奏楽部員から野球部員に、「リクエスト曲があったら言ってね。」と声かけがあったといいます。ただでさえ短い期間に多くの応援曲を練習して下さるのに、そんなことまで言ってもらえるとは、申し訳ないやら嬉しいやら、野球部員たちは俄然盛り上がり、遠慮なくリクエストさせていただきました。
■8月3日
栃木県総合運動公園野球場、午前10時試合開始。
対戦相手は、地元栃木県の強豪校 作新学院。
気象庁の発表によると当日の宇都宮市は、午前9時で30度を越え、最高気温35.6度の猛暑でした。
遠方にもかかわらず応援バスだけでも約60名、自家用車でお越し下さった方も含めると数えきれないほどの方々が応援にかけつけて下さいました。
試合当日の朝、吹奏楽部30名以上を乗せたバスは予定より少し遅れて到着。吹奏楽部員、野球部員、野球部父母、みんなで手分けして駐車場から野球場スタンドまで楽器を運びました。この時点で汗が噴き出す暑さの中、吹奏楽部員の何人かは「すごく楽しみ! 今年も応援演奏に来られて良かったね!」「私は4年連続です! 野球部は毎年定期演奏会に来てくれる。今度は私たちが応援する番です。」と嬉しい言葉の数々。野球部父母は、その気持ちだけで嬉しいです。
試合は7回 5対0でリードを許したまま苦戦を強いられ、8回に1点、9回に2点を返したものの5対3で初戦敗退となりました。
野球部父母会は、北関東大会を勝ち抜き全国大会出場に向けて頑張ろうとする部員たちを精一杯応援することが今大会の目標であるのと同時に、応援にかけつけて下さった方々、関係者全員、熱中症者を出さないという目標もありました。その中でも、普段の室内練習とは違い、猛暑の中で楽器を吹いて体力を使う吹奏楽部の皆さんには、特に気を付けなければならないとの思いがありました。
しかし、彼ら彼女らは流れる汗をかきながら、選手たちの名前を声が枯れるまでお手製メガホンで叫び、音が割れんばかり力一杯の演奏をし続けてくれました。それは遠くの選手まで確実に届き、力となりました。コンバットマーチを始め、野球部員たちが「あの曲だと打てそうな気分になる」というモンキーターン、他にもたくさんの曲が流れました。モンキーターンは、父母からも「コーラス入りで、応援団みんなが一丸となっている感じがして良かった。」「演奏だけではなく声援もあって大変そうだったけれど、楽しんでやってくれてありがたかった。」との声がありました。そして、「打たなければ演奏されないファンファーレは毎回聞きたかった。」との声も。炎天下での演奏は、楽器も焼けて熱く、苦しく、そして辛かったに違いありませんが、誰一人体調を崩すことなく乗り切ってくれました。
「茗溪学園には青春がある」とよく言われますが、この10日余りの短い期間に、吹奏楽部と野球部の間には、かけがえのないたくさんの青春がありました。
吹奏楽部及びご家族の皆様、感動の応援演奏を本当にありがとうございました。
また、日頃から茗溪学園軟式野球部を応援して下さるすべての方々に、この場をお借りして御礼申し上げます。