2015年3月6日、今回の先生インタビューは茗溪学園広報部長であり英語担当、そして茗溪学園1回生の佐藤賢士先生にお話をうかがいました。
-ご出身はどちらですか?
東京都 築地生まれです。小学校時代、私は扁桃腺が弱くいつも熱を出していたような子どもでした。父の知り合いの紹介で、中学入学前に茨城県に引っ越してきました。公立の中学校で3年間過ごした後、新設の茗溪学園高校の1回生として入学しました。当時の茗溪学園は、県内近隣に住んでいても入寮可能でしたので、父の勧めもあり、1年間はテスト的に入寮し、2年生からは希望して高校3年間寮生活を過ごしました。
-大学卒業後のご経歴を教えてください。
大学卒業後は、IT企業に就職しました。入社と同時に新宿本社総務部に配属され、新宿、六本木、幕張、ワシントンDC、ヒューストンと勤務地が変わりましたが、総務畑で7年間勤務を致しました。その後、高校時代の同級生が大学院に行くことになり、その代わりとしてお声をかけて頂いたのがきっかけで母校へ転職致しました。企業での仕事は大変でしたが、とても貴重な体験をすることができ充実した毎日でした。民間企業から転職する際はとても勇気がいりましたが、気がつけば早いもので、教師になって今年で23年目になります。企業で働いていた時に、実社会では様々な知識等が必要であるということを痛感していたので、法律や経営学、経済学などをもっと勉強したいと思っていました。そういった学問は教育の場にも生かしていけると考えていましたので、数年前に母校の大学院に通い、経営学・人的資源管理の研究を行いました。最終学歴は経営学修士(MBA)です。
-先生が1回生でいらした当時と今との違いはどのようなものですか?
当時は歴史も何もなかったので、茗溪学園として何かを作るという使命感を持っていたのが初期の生徒たちでした。ゼロの状態からどう立ち上げていくのか、ルール作りも先生方と一緒にしましたし、いろいろな意味での発想力、想像力が必要でした。今の子どもたちは守りに入っているというか、目の前のことは一生懸命にやるけれども、これから何か新しく作ろうという気持ちが少し薄れてきているような気がします。だから私たちも、子どもたちが自由に発想できるような「仕掛け」をもっと作らなければいけないと感じています。
学校創立当初、寮の周辺は何もない状況でしたので、寮生たちは谷田部の書店まで30分自転車を飛ばして行っていました。今は近くに本屋はもちろん、スターバックスもあるし映画館もありますね。当時と比べれば、とっても恵まれていますね。昔は、ないものは我慢していましたが、どうしても必要な時にはどのようにしたら手に入るか考えたり、あるいはそれに替わるものを自分たちで作ったりもしていました。例えばですが、今も学寮にはTVはありませんが、メディアに代わるものとして在学当時、寮内FM番組を放送した後輩がいました。自分でパーソナリティーをやって、番組制作と放送を実施するということをやっていましたね。寮の中のいろいろな情報を流したり、面白いものを創り出すという実行力に、ある意味感動していました。今の子供たちもそういう面白いことを実際にやってみるとか発想するということが、もっとあってもいいと思います。茗溪には様々なバックグラウンドを持った、個性的な生徒たちが多く集まっています。その多様なバックグラウンドを生かして、生徒たちにもっと新しいことを生み出せるような雰囲気にできないかな、というのが私の課題であり、これからの目標でもあります。
-先生は英語科の先生でいらっしゃいますが、茗溪の英語科の特徴、その授業を通して生徒に伝えたいことはありますか?
ご存知の通り、英語科にはイギリス、ニュージーランド、アメリカ、ハンガリー、フィリピン、ニカラグア、オーストラリア出身の外国人教師たちが英語の授業を担当しています。グローバリゼーションが進んでくると、世界中の人たちとのコミュニケーションにおいて英語を使用することが増々多くなると思います。そういう意味では、茗溪学園は様々な国の英語に触れることができる環境にあると思いますし、欧米だけでないそれぞれの国の文化について、英語科スタッフを通じて同時に学ぶことができると思っています。
英語の授業においても、プレゼンテーションやコミュニケーション能力が磨けるように授業内容を考え、関係した行事を行っています。中1と中2は英語劇、中3はクロスカルチュラル・トーク、高1ではレシテーション・コンテスト等のイベントを実施します。このレシテーション・コンテストは、マーチン・ルーサー・キングJr.や、ケネディ大統領等の名演説を暗唱しスピーチとして発表します。集大成の行事は、高2のオーストラリア海外研修旅行です。海外研修旅行では、これまで身につけてきた英語を実際に使って、現地の高校生たちとの交流、訪問先でのテーマ研修等を行います。このように英語を授業で学ぶだけでなく、実践的に使う機会を中1の時から徐々に増やしていき、日常的コミュニケーション・ツールとして運用できるようにすることを最終目標にしています。さらに、英語ができるだけではこれからの国際社会では不十分ですので、相手の国の文化理解やバックグラウンドを学ぶ機会を増やすために、短期・中長期の海外留学も推奨していますし、ASEAN10ヵ国の高校生受入れや、イギリス、ニュージーランド等から来る交換留学生たちとの交流も積極的に行っています。世界中から異文化のバックグラウンドを持ったゲストをお迎えしながら、1年を通じて、英語を中心とした外国語を使う機会が多くあるというのが、茗溪らしい、良いところだと思います。これは初代校長から脈々と伝統として受け継がれています。そのおかげで、卒業生たちの中には在学中、英語が苦手だったはずなのに、大学在学中に海外留学している、というケースも少なくありません。また、得意な語学力を生かして大使館や外務省、貿易関係、商社マン、弁護士等として世界を飛び回り、活躍しているOB・OGたちもたくさんおります。生徒たちには様々な活動やプログラムの中で、将来に向けて、それぞれが積極的に異文化体験や英語をはじめとする語学習得に向けた努力をしてほしいと思っています。
-広報部長として、どのような茗溪のよさを伝えたいとお考えですか?
本校受験を検討しているお子さんたちや保護者の皆さまに、オープンキャンパスや学校説明会等のイベントに実際に参加していただき、その中で茗溪学園を少しでも分かっていただけるように心がけています。茗溪学園は大学の偏差値だけを見て、進学先や将来の進路を考えさせてはおりません。高校2年生で行っている「個人課題研究」は、自分の将来について考える契機となるようプログラムされています。それぞれが1年間の研究を通じて、自分の興味関心を深く掘り下げ、その中で将来の目標をしっかり考えさせるようにしています。そういった取り組みも行いながら、自分の進むべき方向を考え、大学選び、学部選びをさせています。
私は説明会等で、「実践の茗溪」という言葉をよく使います。私たちは生徒たちに様々なことを体験させ、それが自分たちの力となり、そこから自分の進路を考えられる子どもたちを育てていきたいと考えています。本校ではそれぞれの個性を伸ばすための様々なプログラムを用意しています。勉強とクラブを両立しながらアクティブにいろいろ活動してみたい、いろいろな体験を通じて自分の個性をさらに伸ばしていきたいと思っているお子さんたちに、茗溪を目指していただきたいと思います。
-グローバル入試について教えてください。
英語エッセイと面接(英語)による選抜方式です。英語力を自分で伸ばそうと努力してきたお子さんもいますし、あるいは海外から帰国して英語力を落とさないよう、ずっと英語を保持する環境を作られてきたご家庭もあります。英語を自分の特技としてさらに伸ばしていきたい、入試でも英語力をアピールしていきたいというお子さんには、この選抜方式の入試にチャレンジして頂きたいと思います。
2015年度4月から「グローバルコース」をスタート致しました。このコースはアメリカのテキストを使用し、外国人教師によるオールイングリッシュの英語の授業となっています。授業での英語力の目安ですが、G1コースが英検2級以上、G2コースが英検準2級~3級レベルのクラス編成となっています。このコースで学んでいる生徒たちが2017年設置予定の国際バカロレアIBDPコースに接続できるように準備をしています。グローバルコース入試に合格すると、この英語クラスの参加が確約されます。現在のところまで順調に授業も進んでおり、在籍しているグローバルコース1期生たちは、とてもよく頑張ってくれています。今後が楽しみです。
-先生ご自身の10年後、20年後の夢はありますか?
あと10年したら私も引退の年となっていますが、定年後、家族と船で「世界一周旅行」をすることが夢です。中学、高校と水泳部に所属していましたので、海とか水に関係していることが好きですね。実は小型1級船舶免許も持っているのですが、大型客船でゆっくりと世界中のいろんな地域を見て回るというのはなかなかロマンがあると思いますし、これまで見たこともない素晴らしい景色が見られるだろうなと思っています。まだまだ知らない世界を、たくさん目に焼き付けられるとうれしいですね。
20年後については、まだ想像ができませんが、もしかしたら茨城県を離れて外国を含めた他の地域に移住しているかもしれません。好奇心旺盛なので、健康であれば違った環境を求めて「移動」するのも面白いかなと思っています。新天地での暮らしというのが、ちょっとやってみたい夢ですね。もっとも、健康を維持するためには、もっと痩せないといけませんが。(笑)
-座右の銘を教えて下さい。
中学生の時から、あるハリウッド映画俳優の生き方に感化されていました。彼は大学で哲学を専攻しながら宮本武蔵の「五輪書」を読み、研究もしていました。宮本武蔵の「五輪書」水の巻には、「水」のように自在で固定化されていない、武蔵の構えに関する哲学が書かれています。この「水の巻」の前書きには、「この巻に書かれたことをただ見て習うのではなく、自分自身が発見した事柄として、常にその身になって考え、工夫しなければいけない」とあります。武蔵は「水の巻」に書いてあることをそのまま習うだけでなく、そこから自らが考え工夫することを説いています。この俳優も「五輪書」を研究しながら、自分が今まで伝統的にやっていたことを新しく変えていくことが必要ではないかと気づきました。彼はアメリカで人種差別を受け苦労しましたが、いつかアメリカ人を見返してやるという強い気持ちを持っていました。持てる力を最大限に伸ばす努力をした結果、それまでになかったアクションと新しいジャンルの作品を完成させました。アメリカで初主演したその映画は大ヒットし、世界にその名を知らしめ多くのファンを魅了しました。
「Be Water (水になれ)」という、五輪書に影響を受けたその俳優の言葉があります。水は冷たければ凍り、温かければそのまま存在します。水は環境に合わせて、その姿を変えることができます。私の座右の銘はこの言葉であり、この考え方を大切にしています。常に先を読み、将来の環境を予測しながら、自分を変えていく。そして、様々な環境に対応できるよう自分のスキルを向上させる努力が欠かせないと思っています。環境の変化に合わせて、自分の価値も高めていかなくてはならないと感じています。
今後の世界はいろんな面において、めまぐるしく変わっていくのではないかと思います。特に、複雑な時代となってきた21世紀を生きる子どもたちには、スポンジのように多くのことを吸収しつつ、水のように世の中の変化に対応しながら、困難な場面においても自分で道を切り開き、社会貢献していける能力を身につけていってほしいと思っています。
-茗溪の父母や父母会活動に対して一言お願いします。
みなさん、とても協力的で熱心だと常日頃感謝しております。もともと茗溪学園は生徒、教員、父母の「三位一体の経営」ということで学校創立当初よりスタートしています。中1・中2でのキャンプやその他の教育活動において、今まで多くのご父母にボランティアとしてご協力・ご支援頂き、これまでも実施運営してきています。そういう中で子どもたちの成長過程を見て頂く、また父母会等にも参加して頂くことで、ご父母の皆様に茗溪の教育の良さを感じてもらえるのは大きいと感じています。私は現在広報担当ですが、茗溪学園の本当の広報を担ってくださっているのはご父母の皆様だと思っています。父母会活動が活発化することによって、茗溪学園の取り組みをよくご理解頂けると思いますし、ひいては外部の方たちにも本校をよく知って頂く機会につながっていくのではないかと思います。これからも茗渓学園発展のために、引き続きご協力頂ければありがたいと思っております。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
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-今日は長い時間、実りあるお話をありがとうございました