32回生職業観セミナー

職業観セミナーは、高校2年生以降の進路選択を迫られる高校1年生で例年行われている学校行事です。
茗溪学園の進路指導は、まずなりたい職業をイメージして、その職業に就いて活躍するためには、今どうするのかということから始まります。そのために、職業について深く知るとともに、実際に仕事をされている方々から体験に基づいたお話を頂くことで、職業を通して「人生そのもの」を肌で感じ、考える貴重な機会になっています。
平成22年度の職業観セミナーは、9月11日(土)に開催され、32回生父母から22名の協力により講師を担当しました。職種内訳は、医師、看護師、薬剤師、保育士、スポーツ関係、建築、製造業(機械)、情報(ソフト開発)、男性&女性研究者、経済経営、公務員、国際関係、保安警備、芸術(音楽)、小中学校、航空関係、マスコミ(放送)、出版・広告、宇宙開発、と多岐にわたり、生徒は希望する職種の分科会に参加しました。
セミナー講師を担当した父母から感想を寄せて頂きましたので、4名の感想を紹介します。生徒にとっても、また父母にとっても非常に有意義なセミナーとなったようです。

32回生父母 原 英彦
職業観セミナーに参加して 【医師分科会】

一番印象深かったのは子供たちのエネルギーとパワーでした。挨拶するために大教室に入りましたが、その時から皆の熱気がこちらにも伝わってきました。
久しぶりの感覚であり、こんなエネルギーの中で仕事ができる学校の先生がうらやましく思えた瞬間でした。

分科会で話をしましたが、現高校1年生が職業について興味を持っていたとしても、具体的にどの職種がどんなことをやって、どれだけ苦労するかまたは満足するかなど未だわからない時期だと思います。そのためか生徒たちは比較的受け身で僕の話を聞いていたように思います。
講演も終わり、生徒からの感想文を見ていろんな生徒がいるなと思ったのは以下の文面を見てでした。それは、「職業というものが、お金を儲けるためのものであって、それ以外の生きがいとか自分の興味とかには関係があるとは思えない」といったものでした。確かにそういった考え方もあります。現実的で、経済的な安定を確保することは重要なことです。
しかしながら、お金は所有しているだけでは幸せになれず、その使い道によって幸せになることもこういったセミナーで知ってもらいたいと思いました。頭では理解できていても実際にやってみないと判らない仕事の楽しさ厳しさというものの一端も、このセミナーから学んでもらえたらうれしいです。
自分は高校生になってからなろうと思った職種に就いております。大変やりがいがありますし、楽しいことも多いです。でも辛いことが少ないといったら嘘になります。人の死にざまに直接対峙することが多く、そんな辛い時に、もしお金だけが目的ならもう辞めたい、続けることが出来ないなと思うこともしばしばあります。
「人はパンのみで生きるものに非ず」といった言葉もあります。生徒たちには、そういった倫理社会の勉強も併行してもらいたいと思いました。先にも述べたように経済的な安定が心の余裕を生むという側面もあります。しかし幸せというものは感じるものであり、幸せに「なる」という言葉自体にも誤解が生まれることがあるということ。ぜひ幸せを「感じる」ことができるような職業を選んで欲しいし、或る先生が挨拶の冒頭で「飯が食えて、他の人に喜ばれる仕事を見つけましょう」と述べていましたがまさにその通りとも感じました。
最後に、このセミナーに参加した後、もし次にもう一度機会があれば、ぜひ再び生徒たちの将来に向けて役に立ちたいと強く思いました。

32回生父母 西條 薫
職業観セミナーを体験して 【女性研究者分科会】

 

第1AVE室にて32回生との対面の時、500余りの好奇心に満ちたキラキラの瞳に見つめられ、どこに視線を定めて良いかもわからず、「知りたい、聞きたい」という思いが強く伝わって、一気に緊張してしまいました。その後の分科会でも、一人一人が「自分の目指す職業」をきちんと説明でき、実現に向けて努力している様子が感じられ、とても感動しました。生徒さんから「なぜこの職業を目指したのですか」と聞かれて明確な答えがなく「成り行きで」と答えてしまった自分を本当に恥ずかしく思いました。

また、この職業観セミナーを通して、「親」として貴重な経験をさせていただきました。分科会で生徒さんと約2時間じっくりと話し、現実の「高校1年生」の姿を知ることができたことは大きな収穫でした。我が子とは、職業について・将来についても、なかなか真剣には話すことができず、「職業像」「将来像」を持っているのか心配でしたが、分科会に参加した生徒さんを通して、我が子にも家では見ることのできない面がある、という期待を持つことができました。これからますます親子で将来について話す機会も増えると思いますが、今回の経験を踏まえて、我が子にも接していきたいと思います。

32回生父母 安藤 一彦
職業観セミナーに参加して 【小中学校教員分科会】

 

これまでさまざまな方を教室に招いてきた。有機栽培で米作りに励む方、盲導犬と生活している方など、本やネットでは伝わらない、生の声を子供たちに聞かせたいという願いをもって教育活動に当たってきた。

よもや、教室に招く側の自分が、反対に教室に行くことなど考えたこともなかった。担任の先生から依頼された時も、恥ずかしながら「断ると困るよな。」「家内が行ってくれればな。」「少しは役に立てるか。」という消極的な気持ちであった。
当日、分科会には十数名の生徒さんの参加があった。正直なところ「こんなにたくさんの人が教職に関心があるのか。」という驚きであった。最初にどれくらいの意識をもって参加しているかを知るために自己紹介をお願いした。「自分が小学校の時の先生が・・・」「中学で数学の楽しさを学んで・・・」「部活動の先生のように・・・」等、私が考えていた以上にしっかりとした考えをもっていた。そして、約1時間半の分科会の時間、熱心にメモをとり続けていた人、たくさん質問をした人、ちょっと飽きてしまった人もいたが、私にとっては若い感性に触れることのできた貴重な時間となった。また、質問に答えたり、説明したりしながら、遠い昔の若い頃の自分を思い出した。初めて教壇に立った日のこと、休み時間いつも子どもたちと遊んでいた日のこと、そもそもなぜ教職に就いたのかということまで、若く熱かった自分の初心を振り返る時間でもあった。
帰りの車の中で、せっかくの機会だったので「もう少し関心が高まるような話ができればな。」とか「話の構成を考えて行けばな。」と後悔した。後日、分科会に参加した生徒さんの感想が届いた。将来情熱を持った方と一緒に働きたいと願いながら読ませてもらった。生徒さんのためだけでなく、自分の職業観も見つめ直すセミナーの参加であった。

32回生父母 依田 紀彦
職業観セミナーでお話をさせていただいて 【公務員分科会】

先日、茗溪学園の4年生向けの職業観セミナーで講師の一人として自分の歩んできた人生の概要を茗溪学園の生徒さん達にお話する機会を戴きました。
「公務員について」という何とも平凡なタイトルでしたので、あまり興味を引かなかったと思うのですが、それでも10名の出席者があり、皆さん、興味深く私の話を聞いてくださり嬉しい限りでした。

全体での自己紹介時に、他の講師の方々が実に具体的な自己紹介をなさるので、私もつい「スタートは医師でしたが、その後、地方公務員、中央官庁勤め、弁護士の真似事、外交官…」とやり始めたところで会場から「おぉぉ」という声が上がり、少し恥ずかしくもなりましたので(本当はその後に、自衛隊員、研究職云々と続くのですが)、「まぁ色々な仕事を経験しているので、その経験を皆様にお伝えしたい」と締めくくりましたが、辞令一本でどんな役でもこなさなければならない「役人」の本質をある意味お伝えできたのかなと思いました。
また、たとえ自分が直接関わっていない事件でも被告席に立たされたり、地検の特捜部に調べられたりすることもあり得るという辛い面のお話もさせていただきました。
旧約聖書の時代から現在に至っても、どちらかというと嫌われ役、叩かれ役とされてしまうことの多い職業ですが、公務員に望まれる姿勢として「公共心と正義感」「国民にとって必要なことを貫く勇気と根性」「誘惑に負けない強い自分」「安易に多数派に迎合しない姿勢」と常々自分が感じている持論を展開させて頂きました。参加した生徒の皆さんから頂いた感想文にもそのあたりが通じたかなと思わせる部分も多々ありましたことを大変嬉しく思います。
自分の歩んできた人生について、普段、なかなか纏まって自分の子供にさえも伝える機会がない中で、また、恐らく、全ての親御さんが、それぞれに子供たちに語るべき内容のある人生を歩んできた中で、たまたま私がこの職業観セミナーの講師のひとりに選ばれて僭越にもお話させていただいた幸運に感謝申し上げます。私たちのお話した経験談が、生徒さんたちが自分たちの将来を決めていく上で何らかのお役に立てれば幸甚です。