4年生(高1)父母による「職業観セミナー」

9月1日、4年生(高1)を対象とした「職業観セミナー」が行われました。生徒たちが自分の将来の職業について考える一助となるよう、父母が自身の職業について講義を行うものです。学校側がボランティアとして講師を担当する父母を募集し、今年は医師、弁護士、会計監査事務所、マスコミ、メーカー、パイロット等々、幅広い分野で活躍する23人の父母がそれぞれの職業についてどう考え、何をしているのか、高校生活で大事なことは何かなどを話しました。また、生徒たちは自分の興味に近い講義をそれぞれ2つ選んで聞きました。なかには、同じ業種を2つ選択している生徒もおり、同業者間でも違う内容が聞くことができて有意義な時間を過ごせたようでした。

講師を担当した4人の父母に、当日の様子などを寄稿していただきました。

 

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鈴木ゆかり

 

当日は最初に、新設されたアゴラホールで4年生(高1)全員と職業観セミナーで講師を担当する父母の方々が集まり、各講師の自己紹介から始まりました。各業界のそうそうたるメンバーに、なかには生徒間でどよめきが走るような光景もありましたが、同級生の父母ということもあり、少し身近に感じているという印象も受けました。

さて、私は「金融」の講義を2回担当しました。講義の中で、参加した生徒の皆さんには、なぜ金融に興味があるのか、なぜこの業種を選んだかということを伺いました。理由はさまざまでしたが、「文系や理系を問わずに選択できる」という意見もありました。

まずは「金融とは」という概念を説明しました。金融と一言で言っても、リテール、ホールセールの違い、商業銀行、投資銀行、証券、保険等の違い等を説明するなかで、初めて知る内容も多くあったようで、生徒たちは講義にとても集中していました。テレビや新聞でニュースとして注目されるような大きな案件もあり、インパクトのある仕事という点が生徒たちのモチベーションにもつながっているようでした。

概念の説明の後は、ある1日のスケジュールを紹介し、ふだんどのように生活をしているかをお話ししました。私は外資系企業に勤務しているので、職場での公用語や海外出張の機会についても参考として説明しました。また、私も茗渓学園卒業生ですので、高校生時代に何を目指していたかについても紹介しました。数名の生徒からは、金融に関する的確な質問やワークライフバランスなど、多岐に渡る質問があり、生徒たちの熱意を感じました。

後日、参加した生徒たちのレポート(まとめ、学んだ事等)をいただきました。1人ひとりがよく理解し、また数名の「金融業界にますます興味が湧いた」というありがたいコメントもありました!

生徒の皆さんの進路選択に少しでもお役に立てればと思い、講師として参加させていただきましたが、私自身、とても有意義な時間を過ごすことができました。長い人生の中で、1度決めた職業を全うする方もいれば、新しいチャレンジをする方もいる、ダイバーシティの世の中です。このようなセミナーを通して、将来どのようなことがやりたいのか、どのようなライフスタイル、どの国で働くか、という視点も加味して職業選択へ活かしていただければと思います。

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岸 和幸

 

​ 「『持続可能な社会』というものを具体的にどう目指していく仕事があるのか、疑問に思っていたので、今回実際にそういう仕事をされている人に出会えて、本当に幸せだった。2030年までに達成できれば、みんなが生きやすい社会ができる、それがSDGsだと知った。すてきだなぁと思った。」

今回、いただいたうれしい感想です。

 

当日は、聴講希望の生徒30名が2回に分かれ、「持続可能な未来を拓く君たちへ」と題した講演を聞いてくれました。私の講演の主な内容は、以下の通りです。

 

  1. 予測不能の時代: テクノロジーの進化​やグローバル化の広がりとともに、環境や資源エネルギーの問題が増大している。また災害の大規模化など、これまではありえないと思われていたことが突然起きる時代に入った。
  2. 講師の自己紹介: 人生には突然の転機が訪れることがある。その時にどんな決断ができるか。私は、屋久島登山中のあわや遭難という体験を通して人生観が大きく変わり、システムエンジニアから転身して地球環境保全の道へ。現在、国連が推進するSDGs(持続可能な未来を目指す17のグローバル目標と169のターゲットからなる開発目標)の推進や森林を活かす仕事に従事中。
  3. 持続可能な社会を目指す動き: 2030年に向けてSDGsが世界共通目標となり、「サステナビリティ」を促進するための教育や事業が重視され始めている。その考え方と取組みの例を紹介。
  4. 100年時代の人生戦略: 日本は長寿命化し、「人生100年時代」と呼ばれる時代。自分なりの生き方や働き方の戦略を立てて進んでいくことが大切。これまでの教育→仕事→引退という3ステージから「マルチステージ」の時代に入り、AIやロボットの普及で仕事は消えるものや変化するもの、新しく登場するものなどさまざまに変化する。
  5. 持続可能な未来を拓こう: SNSで世界中がリアルタイムにつながる時代。若者世代を中心に「共感」を重視する価値観が広がり、複雑な社会問題を解決し、持続可能な未来を創り出す柔軟な取り組みや起業が世界各地で現れている。さて、君たちはこれからの未来をどのように生きていく?

私の話を聞いて、生徒たちがどのような反応をするか楽しみであり、やや不安もありましたが、後日学校から送られてきた感想からは、こちらの想像以上に話をしっかりと聞き、理解してくれていたことがわかりました。さすが、茗溪生だなと感心しています。生徒たちが将来を考えるにあたり、いささかの刺激になったということもわかって、少しは役目を果たせたかなと、ホッとしています。

 

以下、生徒の感想の一部をご紹介します。

・「地球環境保全」と一言で言っても、大規模で多くの種類の仕事がある。自分のやりたいことが、地球環境保全につながるかもしれないとわかったので、社会でどんな役に立つか考えてみたいと思った 。

・普通に仕事をしていると分からないこと、できない人的なネットワークを持っていて、こんな生き方があるのかと衝撃を受けた。

・将来、環境に対して何かアクションを起こす際のコツやポイント、資金の集め方や人の動かし方なども教えていただきました。

・30代は20代で就職した仕事のキャリアアップのために働いているようなイメージだったが、今回のお話から30代でも自分のやりたいことを見つけて、学び始めるのは決して遅すぎることはないということが分かった。

・それまでの仕事をやめて、新たな世界に飛び込んでいく感性がすごいと感じた。自分が手に入れているものを捨てて新しいことを始められるという生き方は身の回りになかったから、そういう人生を知ることができて、とても面白かった。

 

今回このような機会をいただき、私自身も自分を振り返る良い機会になりました。これから持続可能な未来を共創していく若者たちの成長と活躍を大いに期待しています。

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岸 真規子

 

私はふだん、サステナブルBody コンディショニングトレーナー(サステナブル体操®/個人事業)として人の健康にかかわる仕事をしています。今回の職業観セミナーでは、「スポーツ」という分野で2コマの講義を担当しました。

 

まず、自分の将来を考える上で、生徒の皆さんに伝えたかったことは、「自分の働き方を自分軸で考え、人生を自分でデザインしてほしい。そしてほんとうの幸せと豊かさを手にしてほしい」ということでした。

そのために以下のようなことを伝えました。

 

  1. 自分が一番大好きでワクワクすることを探してほしい。
  2. やる前にできない理由をいくつも探してあきらめるのではなく、どうやったら夢を実現できるかを考えてほしい。
  3. 無限に広がる自分の可能性に向かって果敢にチャレンジしてほしい(万が一、実現しなかったとしてもそのプロセスが皆さんを必ず輝かせる)。
  4. 人生何度もピンチがやってくる。そんなときは自分を飛躍させるチャンスだと思ってほしい。
  5. 「できるかできないか」ではなく、「やりたいかやりたくないか」を判断基準にしてほしい。

実は私もこの学校の卒業生(12回生)。振り返ると、自分の人生において、いつもその根底には「茗溪魂」があることを感じています。まさに在校中、さまざまな経験を通して培った、「簡単には諦めない気力、体力、粘り強さ」、「チームでものごとにあたるときの協調性、リーダーシップ」、「一歩前に!の勇気とチャレンジ精神」が生きています。

 

そしてもう1つ伝えたかったのは、「仕事をする」ことの意義です。仕事をするということは、ただ単にお金をもらうための手段ではなく、それぞれがそれぞれの持ち場で社会に貢献し、人同士が支えあうこと。また、自分や自分の家庭を豊かにすると同時に地域や国を豊かにすることだと私は考えています。「その仕事が自分の一番得意なことの延長線上にあれば、それほど幸せで素敵なことはない。ぜひ皆さんもそんな風に自分の将来を考えてみてほしい」と伝えました。

 

何かを始めるのに遅すぎるということはありません。今の私の仕事は、まさに茗溪生時代に思い描いていたものそのものですが、大学卒業後、ストレートにこの仕事に就いのかといえばそうではありません。かなりの遠回りをしています。けれども、「それまでの経験すべてに無駄はなく、今に全部が生きている」。そんなこともお話ししました。

 

後日、学校からいただいた生徒の感想文はどれもうれしいものでした。感想を読んでみると、職業観の部分だけでなく、実際のカラダ作りに関するレクチャーにも関心をもっていただけたようです。すべてはご紹介しきれませんが、抜粋してご紹介します。

 

・運動でパフォーマンスを向上させるためには体の芯をしっかりさせることが重要だということがわかった。また自分が運動の得意なことと人に運動を教えることは別で考えたほうが良いということもわかった。

・心に残る言葉が多くとてもおもしろいセミナーだった。できるかできないかではなく、やりたいかやりたくないかで物事を決めることが重要ということを知り、また自分の好きなことをして人々を幸せにする仕事なんてとてもすてきだと思った。

・色々なことにチャレンジしてひとつひとつ夢を叶えているところが本当にすごくて尊敬です。やりたいと思ったことに一生懸命取り組んでいる岸さんはイキイキしていた。私も自分のやりたいと思ったことを全力で頑張りたい。

・体を使ってわかりやすく話してくれたのでとても理解しやすかったです。色々な経験を積んでいてその行動力が素晴らしいと思いました。私も人に喜んでもらえるような仕事につきたい。

 

人生の先輩として、この学校の卒業生として、茗溪生の未来を応援しています。ぜひとも自分の花を咲かせ、人の役に立つ喜びを感じながら、それぞれの命を輝かせてほしいと願っています。  頑張れ、茗溪生!

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田中 新

 

生徒たちに自分の職業である製造業、メーカーで働くことについて話をしました。始める前にちょっと聞いてみると、「ものづくりに興味がある」、とか「メーカー、製造業はどんなことをするところなのか興味があったから来た」、ということでちょっと頼もしく、うれしくなりました。話の内容は以下の通りです。

 

  1. 茗溪生(2回生)だった頃なぜその方面に進むことを考えたのか、寮生活をしながら日頃どんなことを考えていたのか、個人課題研究でどんなことをしてそれがどのように役立ったか。
  2. 大学や就職してからの活動内容、やっている仕事の流れを皆がよく知っている分野の実例を挙げて紹介。
  3. この分野の将来性、世界における日本の製造業の強み、裾野の広さや世界でのシェア、いかに世の中に貢献しているのか。
  4. 茗溪生活の大切さを、特に理系に必要な数学と理科科目について。数学や理科を何のために勉強しているのか、茗溪が掲げる「世界的日本人」がとても重要で、英語だけではなくグローバル社会で生きるためにいかに大事か、日々の積み重ねが大事。

番外.工学と理学の違い、この分野での収入についての最新データを少し紹介。

生徒たちはとても真剣に聞いているようでしたが、あまり質問がなかったので、おもしろかったのか、ためになっていたのか、聞いたことで何か少しでも得ることがあったのかがわからず、生徒たちにとって意味のある講義ができたのかと、かなり心配でした。

あとから生徒1人一人の感想をいただいきましたが、思った以上に言いたかったことが伝わっていることがわかり、感想を読んでとても安堵したとともに、逆にこちらも元気をもらいました。以下、感想の抜粋です。

 

・仕事内容やメーカーを選んだ理由をよく知ることができてよかった。将来についての考え方やどうするべきかなども知ることができ、非常にためになった。

・今あるものは過去の英知の積み重ねで、それはこれからも続いていくということが心に残った。また将来国際的に働くため茗溪での教育はとても大切だ。

・自分と同じ茗溪生かつ寮生の先輩の話を聞いて、学校生活で大切なこと、何を一生懸命やればよいか、メーカーに就く面白さを知ることができた。大学や文理選択で悩んでいるが、とても考えつかなかった「何をやったのか」が主体の考え方を教わった。

・他の国の人と一緒に働く上での大切なことも学べて、とても興味深い話でした。自分がどのような道に進むかわからないが、自分の学部や進路だけで決めないといけないものでもないと感じました。自分の中のメーカーのイメージと違っていて面白かった。

 

職業観セミナーは生徒の進路の一助とするためのものですが、それだけではなく、親側にも大きな意義があるのではと感じました。ふだんの仕事の中で若い高校生からの反応を得る経験がない私にとっては、その反応そのものがとても新鮮でした。将来を考えている生徒たちに触れ、自分の仕事の意義をあらためて考え、初心に帰る機会をもらった気がします。